「2026年夏の甲子園に出場する享栄は、どんなチームなの?」
「31年ぶりの甲子園出場というけれど、今年の享栄は何がそんなに強い?」
「坂本亮太以外には、どんな注目選手がいる?」
甲子園の組み合わせを見て、享栄が気になった人も多いのではないでしょうか。
2026年の享栄をひと言で表すなら、150キロに迫る投手を何人もそろえながら、実際の勝ち方は非常に堅実なチームです。
投打二刀流の坂本亮太、愛知大会決勝を完投した上江瀧拓未、最速148キロ左腕の近藤優をはじめ、タイプの異なる投手を何枚も使えるのが最大の武器。
そこへ1番・藤井陽斗、主将の早川來輝、3番・森迫煌斗、5番を打つ捕手・大森皓太らがかみ合い、バントや走塁も絡めながら接戦をものにしてきました。
享栄は2026年夏の愛知大会決勝で愛工大名電を4対1で破り、1995年以来31年ぶり9回目となる夏の甲子園出場を決めています。愛知大会の優勝自体は31年ぶり10回目ですが、過去に東海大会で敗退して甲子園へ進めなかった大会があるため、甲子園出場回数は9回です。
2026年8月9日時点では、甲子園初戦となる履正社戦が8月11日16時開始予定。相手は大阪大会7試合で66得点を挙げた強力打線を持つ履正社です。
- 2026年の享栄野球部はどんなチームなのか
- 複数の速球派をそろえる投手陣がなぜ強いのか
- 坂本亮太・上江瀧拓未・近藤優・大森皓太ら注目選手の特徴
- 甲子園メンバーと基本スタメン
- 愛知大会を勝ち抜いた理由と全国での課題
- 初戦・履正社戦で注目したいポイント
享栄野球部はどんなチーム?2026年の特徴を先に整理
享栄という名前を聞いて「愛知の古豪」という印象を持つ人もいれば、31年ぶりの夏の甲子園という数字から「久しぶりに出てきた学校」と感じる人もいるでしょう。
ただし2026年のチームを詳しく見ると、単なる古豪復活ではありません。投手育成によって作られた厚い投手陣と、少ない好機を得点へ変える野球を融合させたチームになっています。
| 項目 | 2026年の享栄 |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県名古屋市 |
| 監督 | 大藤敏行 |
| 主将 | 早川來輝 |
| 部員数 | 55人 |
| 夏の甲子園 | 31年ぶり9回目 |
| 春の甲子園 | 11回 |
| 2026年春 | 愛知県大会優勝 |
| 2026年夏 | 愛知大会優勝 |
| 夏の愛知大会決勝 | 愛工大名電に4対1 |
| 最大の武器 | 複数の速球派をそろえる投手陣 |
| 攻撃の中心 | 4番・坂本亮太 |
| 正捕手 | 大森皓太 |
| 甲子園初戦 | 履正社戦 |
享栄高校公式サイトによると、2026年の硬式野球部は大藤敏行監督ら7人のスタッフ体制で、部員数はマネージャーを含め55人。部訓として「走姿顕心」を掲げています。
愛知私学4強の一角として知られる伝統校
享栄は、中京大中京、東邦、愛工大名電とともに、長く「愛知私学4強」の一角として語られてきた学校です。
甲子園出場回数は春11回、夏9回。卒業生には近藤真市、藤王康晴、大島洋平、東松快征らがおり、高校野球だけでなくプロ野球にも選手を送り出してきました。
一方で、夏の甲子園は1995年以来遠ざかっていました。
春夏を通じても2000年春のセンバツ以来となるため、2026年は享栄にとって久しぶりに全国の舞台へ戻った夏です。
ただ、「31年ぶり」という数字だけを見て2026年の優勝を突然の快進撃と考えるのは少し違います。
その理由は、春の時点ですでに愛知の頂点に立っていたからです。
2026年は春の愛知王者として夏を迎えた
享栄は2026年春の愛知県大会で優勝しています。
春の県大会では5試合で32得点、チーム打率.318。投手陣も自責点7、チーム防御率1.40と、投打ともに高い数字を残しました。
さらに春季東海大会でも決勝まで進出。
夏の愛知大会でいきなり強くなったのではなく、春から県内トップクラスの力を示し続け、そのまま夏の代表権までつかんだ形です。
春の公式戦では名古屋地区予選から県大会まで11戦無敗という時期もあり、大藤監督自身も複数投手を試合へ任せられる手応えを語っていました。
2026年の享栄が強い5つの理由
享栄の強さについては「速い投手がたくさんいる」という説明が最も分かりやすいでしょう。
ただ、愛知のような激戦区で中京大中京、星城、愛工大名電を続けて倒すには、それだけでは足りません。実際の試合を見ると、投手力、捕手、打線、小技、精神面がうまくつながっています。
2026年の強さを整理すると、特に重要なのは次の5点です。
- 最速145キロ以上の投手を複数そろえる圧倒的な投手層
- 148キロを投げながら4番も担う坂本亮太の二刀流
- 大森皓太がタイプの違う投手たちの力を引き出している
- 藤井陽斗から坂本へつながる上位打線に勝負強さがある
- バントや走塁を使い、ロースコアでも1点を取り切れる
最大の特徴は「エース一人」ではなく投手陣そのものが強い
高校野球では、150キロ近いボールを投げるエース一人がチームを引っ張るケースがあります。
享栄の場合は事情が違います。
春の県大会から東海大会にかけて140キロを超えた投手が6人いました。
坂本亮太と近藤優が148キロ、多賀衛太が147キロ、上江瀧拓未と岩田健蔵が146キロ、2年生左腕の鎌田拳至も141キロを計測しています。
夏の愛知大会前に限っても、最速145キロ以上の投手が5人ベンチ入りしていました。
重要なのは球速そのものより、これだけ選択肢があることです。
誰かの調子が悪ければ別の投手へ代えられる。
相手の右打者が続けば右腕、左打者との相性を変えたければ左腕を出せる。
連戦でも一人へ負担を集中させずに済みます。
地方大会だけでなく、勝ち進むほど投手の疲労管理が重要になる甲子園でも、この層の厚さは大きな武器になります。
大森皓太という捕手が投手王国を成立させている
享栄について調べると坂本、上江瀧、近藤の名前が目立ちますが、投手陣と同じくらい覚えておきたいのが正捕手・大森皓太です。
大藤監督は春の県大会優勝について、大森の台頭が非常に大きかったと評価しています。
特にリード、キャッチング、捕手としての立ち居振る舞いを高く評価しており、自身の長い指導歴の中でも珍しいタイプの捕手だと語っています。大森は打線でも5番を務め、強豪大学からも注目される存在です。
これは享栄の投手層を理解するうえで重要なポイントです。
坂本、上江瀧、近藤、多賀、岩田は、それぞれ投球スタイルも立場も違います。
速い投手を何人集めても、捕手が各投手の特徴を把握し、その日の状態や相手打者に合わせて使い分けられなければ、単なる「人数の多さ」で終わってしまいます。
大森が中心にいるからこそ、享栄は厚い投手陣を一つのチームの武器として使えていると見ることができます。
強打よりも「必要な1点」を取る野球ができる
2026年夏の愛知大会で享栄は6試合33得点。
一方で総犠打数は18、盗塁は8を記録しています。公開集計ではチーム打率.285、平均得点5.5点でした。
数字を見ると、毎試合二桁得点を奪う超強力打線というタイプではありません。
むしろ投手が抑えている間に走者を送り、一本の適時打で得点する野球に強みがあります。
象徴的なのが愛工大名電との決勝です。
1点を追う4回、先頭の藤井が四球で出塁すると、2番・早川が送りバント。
そして3番・森迫が同点二塁打、4番・坂本が勝ち越し適時打を放っています。
5回にも菅沼が四球で出ると増田が送り、藤井の二塁打で追加点。
長打だけでなく、「出塁→送りバント→一本」という高校野球らしい得点パターンをきっちり実行しました。
主力だけではなく複数の選手が勝負を決められる
愛知大会を振り返ると、毎試合ヒーローが同じではありません。
中京大中京戦では藤井が勝ち越し打。
愛知戦では坂本が3ランを含む4打点、菅沼も4打点。
星城戦では菅沼が貴重な2点三塁打。
決勝では森迫、坂本、藤井、菅沼がそれぞれタイムリーを放っています。
坂本を徹底的にマークしても、その前後から点を取れることが享栄の強みです。
甲子園では特定の主砲への対策がさらに厳しくなるため、脇を固める打者の勝負強さは重要になります。
大藤監督が求める「接戦を勝ち切る野球」が形になった
2026年の享栄の特徴を理解するうえで、大藤敏行監督の野球観は外せません。
大藤監督は春の取材で、低反発の新基準バットでは大量得点だけを期待するのは難しく、強いチームにはここ一番で簡単なミスをしない堅実さが必要だという考えを語っています。
実際、夏の重要試合はその考え方をそのまま表した結果になりました。
中京大中京に4対1。
星城に3対1。
愛工大名電に4対1。
派手な二桁得点ではなく、投手が試合を作り、必要な得点を奪い、リードを守り切っています。
速球派投手軍団という派手な看板を持ちながら、勝ち方そのものは泥臭く堅実。
これが2026年の享栄を最も正確に表す特徴かもしれません。
享栄の2026年夏の甲子園メンバー
甲子園を見る前にメンバーを確認しておきましょう。
- 地方大会では背番号10だった坂本亮太が、甲子園では背番号1に変更されています。
- 地方大会の背番号と甲子園の背番号を混同しないようにチェックしておきましょう。
公開されている第108回夏の甲子園登録メンバーは次の20人です。
| 背番号 | 選手 | 学年 | 投打 |
|---|---|---|---|
| 1 | 坂本亮太 | 3年 | 右投左打 |
| 2 | 大森皓太 | 3年 | 右投右打 |
| 3 | 菅沼琥太朗 | 2年 | 右投右打 |
| 4 | 竹内泉汰 | 2年 | 右投左打 |
| 5 | 増田大悟 | 3年 | 右投左打 |
| 6 | 早川來輝 | 3年 | 右投右打 |
| 7 | 永谷陽翔 | 3年 | 右投左打 |
| 8 | 森迫煌斗 | 3年 | 右投右打 |
| 9 | 藤井陽斗 | 3年 | 左投左打 |
| 10 | 近藤優 | 3年 | 左投左打 |
| 11 | 上江瀧拓未 | 3年 | 右投左打 |
| 12 | 冨成偉温 | 3年 | 右投右打 |
| 13 | 平林来斗 | 3年 | 右投左打 |
| 14 | 西珀 | 3年 | 右投右打 |
| 15 | 木村健汰 | 2年 | 右投左打 |
| 16 | モリス漣 | 2年 | 右投右打 |
| 17 | 鎌田拳至 | 2年 | 左投左打 |
| 18 | 多賀衛太 | 3年 | 右投右打 |
| 19 | 浅田弥葵 | 3年 | 右投右打 |
| 20 | 岩田健蔵 | 3年 | 右投右打 |
甲子園メンバー20人のうち、17人は愛知県内中学校の出身とされています。
県外から全国の有力選手を大量に集めた構成ではなく、愛知県内の中学硬式・軟式野球で育った選手が中心になっている点も特徴です。
坂本亮太が甲子園で背番号1になった意味
地方大会では近藤優が背番号1、坂本亮太が背番号10でした。
ところが甲子園では坂本が1、近藤が10へ変更されています。
もちろん背番号だけで実際の登板順が決まるわけではありません。
享栄は一人だけを絶対的エースに固定するより、相手との相性や状態によって複数投手を使うチームだからです。
それでも、二刀流でチームの中心にいる坂本が聖地でエースナンバーを背負うことには象徴的な意味があります。
坂本自身も甲子園練習で、大藤監督をもう一度日本一の監督にしたいという思いを語っています。
享栄の基本スタメンと打順
甲子園で同じ打順になるとは限りませんが、愛知大会終盤ではかなり明確な基本形ができていました。
準決勝の星城戦と決勝の愛工大名電戦では、1番から9番まで同じスタメンを採用しています。
| 打順 | 選手 | 守備の基本形 |
|---|---|---|
| 1 | 藤井陽斗 | 右翼 |
| 2 | 早川來輝 | 遊撃 |
| 3 | 森迫煌斗 | 中堅 |
| 4 | 坂本亮太 | DH |
| 5 | 大森皓太 | 捕手 |
| 6 | 永谷陽翔 | 左翼 |
| 7 | 菅沼琥太朗 | 一塁 |
| 8 | 増田大悟 | 三塁 |
| 9 | 竹内泉汰 | 二塁 |
| 投手 | 試合によって変更 | 坂本・上江瀧ら |
この打線で面白いのが、4番・坂本をDHへ置けることです。
2026年度から高校野球でも指名打者制度が導入されました。
これによって、上江瀧や近藤を先発させながら坂本を4番に置くことができます。
坂本が登板しない試合でも打撃力を失わず、必要なら投手として使う選択肢を残せるため、二刀流選手を抱える享栄にとってDH制度は非常に相性がいいルールです。
享栄最大の武器は150キロに迫る強力投手陣
享栄野球部がどんなチームかを語るなら、やはり最も時間を割くべきなのは投手陣でしょう。
春の時点で140キロ超が6人。しかも右投手だけではなく左腕もいるため、単なる球速自慢ではなく継投の組み合わせを何通りも作れます。
| 投手 | 学年 | 投打 | 最速の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 坂本亮太 | 3年 | 右投左打 | 148キロ | 4番を打つ二刀流 |
| 近藤優 | 3年 | 左投左打 | 148キロ | 左の本格派 |
| 多賀衛太 | 3年 | 右投右打 | 147キロ | 経験豊富な速球派 |
| 上江瀧拓未 | 3年 | 右投左打 | 146キロ | 安定感と投球術 |
| 岩田健蔵 | 3年 | 右投右打 | 146キロ | 大型右腕 |
| 鎌田拳至 | 2年 | 左投左打 | 141キロ | 貴重な2年生左腕 |
球速はあくまで各大会や取材で計測された最速値です。
毎試合この数字が出るわけではありませんが、6人それぞれに140キロを超えた実績があること自体、一般的な高校の投手陣とは大きく違います。
坂本亮太は148キロを投げる4番打者
最も分かりやすいスターは坂本亮太です。
最速148キロの右腕でありながら、打順では4番。
中学時代から高い評価を受け、東海中央ボーイズ時代には全国的にも注目された選手でした。春の東海大会では先発として3回を投げた後もDHとして打席へ残り、4打数4安打1打点を記録しています。
夏の愛知大会でも二刀流ぶりは変わりませんでした。
準決勝の星城戦では先発して5回無失点。
一方、準々決勝の愛知戦では打者として3ランを含む4打点、決勝では勝ち越しタイムリーを放っています。
投手として試合を作りながら、打者として試合を決められる。
享栄の戦い方に大きな自由度を与えている選手です。
上江瀧拓未は数字以上に「試合を任せられる」投手
地方大会で最も重要な仕事を果たしたのは、上江瀧拓未といってもいいでしょう。
愛工大名電との決勝では先発し、9回101球、被安打5、1失点で完投しています。
5回戦の中京大中京戦でも2番手として5回無失点。
準決勝の星城戦でも坂本の後を受けて終盤まで投げました。
春には22回2/3で18奪三振、1失点という安定した数字を残し、大藤監督から夏のエース候補として評価されていました。
球速は最速146キロですが、享栄で最速ではありません。
それでも春から夏まで重要な場面を託され続けていることを考えると、球速以上に試合を作る能力への信頼が高い投手です。
大会前の識者予想では、上江瀧を実質的なエースと評価して享栄を優勝候補に挙げる見方まであります。右横手気味の独特な角度と緩急を評価する分析です。
近藤優は148キロを投げる左腕
右の速球派を何人も持っているだけでも厄介ですが、享栄には左腕・近藤優がいます。
しかも最速は148キロ。
春は16回2/3で16奪三振、3失点と結果を残し、上江瀧と並んで大藤監督から夏のエース候補に挙げられました。
夏の中京大中京戦では先発して4回1失点。
準決勝の星城戦では9回二死満塁、2点差という極めて苦しい場面で上江瀧を救援し、最後の打者を空振り三振に取って試合を終わらせました。
右腕が続いた後に148キロ左腕が出てくる。
打者から見れば目線やボールの角度が一気に変わるため、継投のカードとしても大きな価値があります。
多賀衛太・岩田健蔵・鎌田拳至まで控える
享栄の投手陣が本当に怖いのは、坂本、上江瀧、近藤で話が終わらないことです。
多賀衛太は147キロ。
190センチ級の大型右腕・岩田健蔵は146キロ。
2年生左腕の鎌田拳至も141キロを計測しています。
愛知戦では近藤から多賀、鎌田、坂本と4投手を継投しました。
一人を引っ張る必要がないため、その日の状態を見て早く交代することもできます。
甲子園で履正社のような強力打線と対戦するときには、打者が投手へ慣れ始める前にタイプを変えられることが大きな意味を持ちます。
なぜ享栄は速い投手を次々と育てられるのか
これほど速球派が並ぶと、最初から全国トップクラスの投手だけを集めたチームに見えるかもしれません。
ところが享栄の投手育成を調べると、入学後に大きく球速を伸ばした選手が少なくありません。そこには中山凌志副部長らによるトレーニングの積み重ねがあります。
中山凌志副部長による球速向上のトレーニング
享栄出身の中山凌志副部長は2021年に母校へ戻り、投手の球速向上につながるトレーニングを担当してきました。
高校野球ドットコムの取材では、中山コーチの指導によって20人近い投手が140キロ超へ到達したと紹介されています。
特徴的なのは、全員の投球フォームを一つの型へ当てはめていないことです。
選手それぞれの投げ方を尊重しつつ、大学時代に学んだトレーニングを通じて基礎体力や出力を高めています。
上江瀧は高校入学後に20キロ以上球速を伸ばしたとされ、坂本も138キロから148キロへ到達しました。
つまり2026年の「投手王国」は、偶然速い投手が同学年に集まっただけではありません。
ここ数年間の育成によって形成されてきたものです。
投手が多いからチーム内競争も激しくなる
140キロを超えただけでは試合に出られない。
これは投手にとってかなり厳しい環境です。
坂本が148キロを投げても、左には近藤がいる。
多賀が147キロを投げても、上江瀧は試合で結果を残す。
その後ろにも岩田や鎌田がいる。
この競争が、単純な最高球速だけではなく、制球、変化球、試合を作る能力を高める方向へ働いていると考えられます。
実際、大藤監督は春の時点で「誰がエースとは決めきれない」としながら、試合を任せられる投手の多さを評価していました。
享栄打線は坂本亮太だけを見ていては分からない
投手陣があまりに目立つため、享栄は「守って勝つだけのチーム」と思われることがあります。
ただし春の愛知県大会では5試合32得点、打率.318。夏にも愛知戦で10点を奪っており、攻撃力がないわけではありません。
特徴は、長打を待つのではなく上位から下位まで役割が整理されていることです。
1番・藤井陽斗が享栄打線を動かす
甲子園初戦を前に、最も重要な打者の一人が藤井陽斗です。
愛知大会では18打数8安打。
履正社戦の大会公式系プレビューでも、享栄側の注目選手として藤井が挙げられています。
藤井が出れば、2番・早川が送る。
森迫と坂本でかえす。
これが享栄の基本的な得点パターンです。
愛工大名電との決勝でも4回に藤井が四球で出て早川が送り、森迫、坂本の連続タイムリーで逆転しています。
5回には藤井自身が適時二塁打。
中京大中京戦でも勝ち越し打を放っています。
坂本が4番として怖くなるかどうかは、その前に藤井が塁へ出られるかで大きく変わります。
2番・早川來輝は主将として守備と小技を担う
早川來輝は主将であり、遊撃手です。
打順は2番。
夏の愛知大会では犠打を重ね、決勝でも藤井の出塁直後に送りバントを決めています。
打てる選手を並べるだけではなく、早川が走者を進めることで3番・森迫、4番・坂本へ得点圏の走者を渡す。
享栄の野球を象徴する役割です。
守備でも遊撃の中心となるため、投手中心のチームを支える主将として欠かせません。
3番・森迫煌斗が4番への橋渡しをする
森迫煌斗も派手さ以上に重要です。
準決勝の星城戦では初回に犠牲フライを放って先制。
決勝では1点を追う4回、早川が送った二塁走者を適時二塁打でかえし、同点に追いつきました。
森迫が走者をかえれば坂本への負担が減ります。
森迫が出塁すれば坂本が走者ありで打席へ立てます。
「坂本の前を打つ3番」という役割を高いレベルでこなしている選手です。
4番・坂本亮太には長打と勝負強さの両方がある
坂本は愛知戦で3ラン本塁打を放っています。
しかし決勝で必要だったのはホームランではありませんでした。
森迫が同点打を放った直後、一死二塁から右前へ勝ち越しタイムリー。
全国大会では相手投手のレベルが上がるため、毎試合ホームランを期待するのは現実的ではありません。
強振だけではなく、得点圏で一本を打てることが坂本の大きな価値です。
7番・菅沼琥太朗は下位打線のキーマン
2026年夏に一気に存在感を高めたのが2年生・菅沼琥太朗です。
準々決勝の愛知戦では二塁打2本を含む4打点。
準決勝の星城戦では1対0の6回、貴重な2点三塁打。
決勝でも6回に適時打を放っています。
4番や5番で攻撃が終わらず、7番からも点が取れる。
これは相手投手にとって非常に嫌な打線です。
しかも菅沼は2年生。
甲子園で活躍すれば、今大会だけでなく次の世代へつながる選手としても注目されるでしょう。
享栄で特に注目したい選手
甲子園の試合を初めて見る人は、まず次の選手を覚えておけばチームの特徴をつかみやすくなります。
投手だけでなく捕手、上位打線、下位打線まで見ることで、享栄が一人のスターに依存していないことが分かります。
- 坂本亮太:最速148キロと4番を両立する投打二刀流
- 上江瀧拓未:愛知大会決勝を9回1失点で完投した右腕
- 近藤優:最速148キロを記録する本格派左腕
- 大森皓太:強力投手陣をまとめる正捕手兼5番打者
- 藤井陽斗:愛知大会18打数8安打のリードオフマン
- 菅沼琥太朗:準々決勝から決勝まで勝負強さを見せた2年生
注目度なら坂本、チームへの影響なら大森も見逃せない
甲子園中継では坂本に注目が集まるでしょう。
球速表示が148キロへ近づけば話題になりますし、4番打者でもあるため打席でも目立ちます。
しかし享栄の野球を深く見るなら、大森にも注目してください。
投手が坂本から上江瀧へ代わったとき。
上江瀧から近藤へ代わったとき。
それぞれにどんなサインを出し、どのコースを要求するのか。
投手王国を支える大森の働きまで見ると、享栄の強さがさらに分かりやすくなります。
大藤敏行監督はどんな監督?
2026年の享栄を作った人物として、大藤敏行監督も重要です。
大藤監督は2018年8月から享栄を指揮していますが、高校野球ファンには別の学校での実績でもよく知られています。
2009年夏に中京大中京を全国優勝へ導いた名将
大藤監督は2009年夏、中京大中京を率いて全国制覇を達成しています。
2010年限りで中京大中京の監督を退任し、2018年8月に享栄監督へ就任。
2026年夏、享栄を31年ぶりの甲子園へ導きました。
つまり2026年の甲子園は、大藤監督にとって「初めて全国大会へ出る監督」ではありません。
全国の頂点まで知っている指揮官が、長く甲子園から遠ざかっていた享栄を率いて戻ってきたことになります。
「派手に勝つ」より接戦を落とさないチームを目指してきた
大藤監督の2026年チーム評は、実際の戦い方を理解するヒントになります。
春の段階で大藤監督は、2026年のチームについて個々の能力だけでなく、粘り強く最後まで諦めない集団へ変わってきたという手応えを示していました。
また新基準バット導入後の高校野球では、大量得点を期待するだけでなく、簡単なミスを減らし接戦を勝ち切ることが重要だという考えも示しています。
夏の結果は、その考え方を証明するものになりました。
強豪との試合ほどロースコアに持ち込み、一つずつアウトを取り、一つずつ走者を進める。
だから享栄を見るときは、「豪速球軍団なのだから圧倒するだろう」と考えるより、強い投手陣を使って接戦を作り、最後に1点多く取るチームと考えたほうが実像に近いでしょう。
2026年夏の愛知大会をどう勝ち上がった?
享栄の31年ぶり出場がどれほど価値のあるものだったかは、対戦相手を見るとよく分かります。
愛知大会には181校、174チームが参加。享栄は春の県大会優勝によってシード校として夏を迎えました。
| ラウンド | 対戦相手 | 結果 |
|---|---|---|
| 3回戦 | 知立東 | 8-1 |
| 4回戦 | 愛知啓成 | 4-2 |
| 5回戦 | 中京大中京 | 4-1 |
| 準々決勝 | 愛知 | 10-2 |
| 準決勝 | 星城 | 3-1 |
| 決勝 | 愛工大名電 | 4-1 |
6試合の合計は33得点8失点です。
得点数だけなら全国屈指の超強力打線ではありません。
しかし6試合で8失点しかしていないため、毎試合大量得点する必要がなかったとも言えます。
中京大中京を倒して勢いに乗った5回戦
大きな山場になったのが5回戦です。
相手の中京大中京は2026年春のセンバツでベスト4へ進出した強豪でした。
享栄は先制後に追いつかれますが、藤井の勝ち越し打などで再びリード。
投手陣も近藤から上江瀧へつなぎ、4対1で勝利しました。上江瀧は5回を1安打無失点に抑えています。
夏の甲子園を目指す途中で、春の全国4強を倒した。
選手たちにとって大きな自信になった試合でしょう。
愛知戦では10得点して打線の爆発力も見せた
準々決勝では愛知に10対2。
初回から坂本、永谷、菅沼の適時打で4点を奪い、2回には坂本が3ランを放っています。
投手陣は近藤、多賀、鎌田、坂本と継投。
大差がついた試合でも一人に負担を集中させず、複数投手を使いました。
ロースコアの接戦だけでなく、相手投手を攻略できれば二桁得点まで伸ばせることを示した試合です。
星城戦は投手層と精神力が出た3対1
準決勝の星城戦では坂本が5回無失点。
6回から上江瀧へつなぎました。
打線は初回に森迫の犠牲フライで1点を先制し、6回に菅沼の2点三塁打で3対0とします。
ただし9回は簡単ではありませんでした。
星城に1点を返され、二死満塁。
さらに上江瀧が足をつるアクシデントもありました。
そこで登板したのが近藤。
最後の打者を三振に取り、3対1で逃げ切っています。
まさに享栄の投手層が勝敗を分けた試合です。
決勝は愛工大名電に逆転勝ち
決勝の愛工大名電戦では初回に先制されました。
それでも上江瀧が追加点を与えず、打線が4回に逆転。
森迫が同点二塁打、坂本が勝ち越し打、5回に藤井、6回に菅沼が適時打を放って4対1としました。
上江瀧は9回まで投げ切り1失点。
こうして享栄は31年間閉ざされていた夏の甲子園への扉を開きました。愛知県高野連も優勝を31年ぶり10回目、甲子園出場を9回目と正式に記録しています。
享栄に弱点はある?全国で勝つための課題
これだけ投手がそろっていると、弱点のないチームに見えるかもしれません。
しかし春から明確に残っている課題があります。特に甲子園では地方大会より投手のレベルが上がるため、享栄自身がどれだけ得点できるかが大きなテーマになります。
- 全国級の速球・変化球を持つ好投手から、少ない好機で2~3点を奪えるか
- 四球や失策で余計な走者を出さず、強力打線に大量得点のきっかけを与えないか
全国級の好投手からどう得点するか
春季東海大会決勝で、享栄は県岐阜商に4対6で敗れました。
この試合では終盤に登板した最速149キロ右腕を攻略できず、7回以降は1安打無得点に抑えられています。
試合後、大藤監督も150キロ近い直球や鋭い変化球を持つ全国クラスの投手から、どう得点するかを課題として挙げました。
享栄には自校の練習で速球を見る環境があります。
それでも試合では球速だけでなく変化球、制球、配球が加わります。
甲子園で勝ち上がるためには、好投手から大量点を取れなくても、四球、バント、盗塁、進塁打を絡めて2~3点を奪えるかが重要です。
愛知大会では失策もゼロではなかった
公開集計では、愛知大会6試合で享栄の失策は7。
平均すると1試合1個を超えています。
もちろん高校野球の記録上の失策だけで守備力を単純評価することはできません。
ただ、大藤監督が「簡単なミスをしないこと」を重要視しているだけに、甲子園では守備もチェックポイントになります。
履正社のような強打線を相手にすると、四球や失策で余計な走者を出した後の長打が大量失点へつながります。
投手力を最大限生かすためにも、守備側がアウトにできる打球を確実に処理できるかが大切です。
享栄は全国でどこまで強い?
31年ぶりの出場校だけに、甲子園での評価が気になる人もいるでしょう。
結論からいえば、久しぶりの出場だからといって「まず1勝が目標」という戦力ではありません。投手層については全国相手でも十分に勝負できるという評価があります。
優勝候補に挙げる識者もいる
大会前のweb Sportivaによる識者5人の優勝予想では、菊地高弘氏が享栄を優勝校に予想しています。
上江瀧の投球術、坂本や近藤まで含めた投手陣の厚さを高く評価したうえで、初戦の履正社戦を突破すれば勢いに乗る可能性を指摘しています。
もちろん、これは一人の識者による予想です。
享栄が大会全体の絶対的本命という意味ではありません。
ただ、31年ぶりの代表校でありながら、全国制覇まで予想する野球関係者がいるほど投手力を評価されていることは分かります。
全国でも通用しやすいのは投手力
高校野球のトーナメントでは、打線は水物と言われます。
地方大会で大量点を取ったチームでも、全国クラスの好投手に当たれば1~2点しか取れないことがあります。
その点、享栄は自分たちが2~4点しか取れない試合でも勝てる可能性があります。
相手を1~2点に抑える力があるからです。
中京大中京、星城、愛工大名電をすべて1失点で退けた実績は、全国大会を考えるうえでも心強い材料です。
甲子園初戦は履正社戦|最大の見どころ
2026年8月9日時点で、享栄の甲子園初戦は8月11日16時開始予定の履正社戦です。
履正社は大阪大会7試合で66得点を記録。4番・辻は大阪大会打率.462、15打点を残しており、攻撃力では全国トップクラスと見られるチームです。
「享栄の投手力」と「履正社の打力」。
非常に分かりやすい構図の好カードです。
享栄が履正社戦で勝つための5つのポイント
享栄が自分たちの形へ持ち込めるかを見るなら、球速だけでなく試合の流れを見ることが重要です。
特に注目したいのは次のポイントです。
- 藤井が出塁して坂本の前に走者を置けるか
- 履正社に序盤の大量得点を許さないか
- 上江瀧・坂本・近藤をどう使い分けるか
- バントや走塁で少ない好機を得点へ変えられるか
- 四球と失策を減らし余計な走者を出さないか
履正社の66得点をそのまま恐れる必要はない
履正社の大阪大会66得点は非常に目立つ数字です。
ただし一発勝負では、地方大会の平均得点がそのまま出るわけではありません。
享栄には右の坂本、上江瀧、左の近藤という異なるタイプの投手がいます。
同じ投手を9回まで見せ続けるのではなく、打者が対応し始める前に投手を替えれば、履正社打線のタイミングをずらすことができます。
地方大会でも享栄は継投で強豪を抑えてきました。
履正社戦でもベンチがどのタイミングで動くかが大きな見どころです。
先発が上江瀧なのか坂本なのかも注目
愛知大会決勝の実績だけを見れば、上江瀧を先発させる選択は自然です。
一方で準決勝では坂本が5回無失点。
近藤にも中京大中京戦などで先発経験があります。
誰を出しても一定以上の球速があるため、享栄は先発を予想しにくいチームです。
そして先発が誰であっても、坂本をDHで4番へ置けます。
2026年から導入されたDH制度をどう使うかも、今年ならではの見どころです。
得点の鍵は「坂本が打つか」より「坂本の前に誰がいるか」
4番なので坂本の成績に注目が集まります。
しかし享栄打線の状態を見るうえでは、坂本自身の安打数以上に、坂本の打席で走者がいるかを見ると分かりやすいです。
藤井が出塁。
早川が送る。
森迫がつなぐ。
この形で坂本へ回れば、履正社バッテリーは簡単に勝負できません。
坂本を避ければ5番・大森へ走者を残すことになります。
反対に藤井から森迫までを三者で切られると、坂本が走者なしで打席へ入る回数が増えます。
享栄が点を取れているかどうかは、上位3人の内容を見るとかなり判断できます。
享栄の部訓「走姿顕心」に見るチームカラー
享栄高校野球部が掲げている部訓は「走姿顕心」です。
学校公式サイトでは「走っている姿に、その人の心があらわれる」と説明されています。
これは試合の戦術を表す言葉ではありません。
ただ、2026年のチームを見ていると、派手な個人成績だけでなく、走塁、バント、守備、継投といった一つ一つのプレーを重ねて勝っている点は印象的です。
大藤監督も準決勝後、良いチームができるためには選手、保護者、学校の協力が重なることが大切だという趣旨の話をしています。2026年の享栄について、その条件がうまくかみ合っているという手応えも示しました。
長く甲子園へ届かなかったチームが31年ぶりに壁を越えた背景には、速球派の育成だけでは説明できない部分もあります。
享栄野球部についてよくある質問
最後に、2026年夏の甲子園で享栄を見る人が気になりやすいポイントを整理します。
基本情報を押さえておけば、初めて試合を見る場合でもチームの特徴がかなり分かりやすくなります。
2026年の享栄は「投手王国」だけではない総合力型のチーム
2026年の享栄野球部はどんなチームなのか。
最も分かりやすい答えは、全国屈指の厚い投手陣を土台に、守備、小技、走塁、勝負強い打撃で接戦を取り切るチームです。
坂本亮太と近藤優が148キロ。
多賀衛太が147キロ。
上江瀧拓未と岩田健蔵が146キロ。
鎌田拳至も141キロ。
春の時点で140キロ超の投手が6人いました。
しかし享栄の強さは、「140キロ台を投げる高校生が何人いる」という数字だけでは説明できません。
投手陣をまとめる大森皓太がいる。
1番の藤井陽斗が出塁する。
主将の早川來輝が送り、森迫煌斗と坂本亮太がかえす。
下位には勝負強い菅沼琥太朗もいます。
そして大藤敏行監督が求めてきたのは、豪快に打ち勝つだけのチームではなく、簡単なミスをせず接戦をものにできるチームでした。
その完成形に近い野球を見せたのが2026年夏の愛知大会です。
センバツ4強の中京大中京を4対1。
星城を3対1。
決勝では愛工大名電を4対1。
強豪を次々と1失点に抑え、31年ぶりの甲子園出場を決めました。
一方、課題もあります。
春の東海大会では全国級の速球派を終盤に攻略できず、大藤監督自身も全国レベルの投手からどう点を取るかを課題として挙げました。
だから甲子園では、享栄の投手が何キロを出すかだけではなく、
「藤井が塁へ出られるか」
「早川が確実に走者を進められるか」
「森迫や坂本が少ない好機で一本を出せるか」
「大森が複数投手をどうリードするか」
「大藤監督がどのタイミングで投手を代えるか」
まで見てみると、享栄というチームの面白さがよく分かります。
初戦の履正社は大阪大会7試合66得点の強力打線を持つ難敵です。
ただ、相手が強力打線だからこそ、2026年の享栄が全国でどこまで通用するのかを見るには格好の相手でもあります。
31年ぶりに夏の甲子園へ戻ってきた愛知の古豪。
その実態は、過去の伝統だけで戦うチームではありません。
複数の速球派を育てられる育成力、全国優勝を知る監督、投手を支える捕手、勝負どころで役割を果たす打線。それらが一つにつながったのが、2026年の享栄です。
履正社との初戦で、その「投手王国+堅実な野球」が全国屈指の打線をどこまで封じ込めるのか。
2026年夏の甲子園で、かなり注目して見ておきたいチームの一つです。
