スクイズが成功したとき、スコアブックには「SQ」と書けばよいのでしょうか。それとも通常のバントと同じように「1-3」「5-3」などと記録するのでしょうか。
さらに迷いやすいのが、スクイズを空振りしたとき、本塁で三塁走者がアウトになったとき、守備側のエラーや野手選択が絡んだときです。
結論からいうと、スクイズのスコアは「スクイズ」という作戦名だけを書くのではなく、実際に起きた打撃・守備・走塁の結果を記録するのが基本です。
NPB式スコアブックでは、犠打になったゴロは「1-3」「5-3」など実際の守備プレーを書き、そのアウトの種類を四角で囲んで犠打であることを示します。
また、バントの空振りには通常の空振りとは別の記号、野手選択には「Fc」、盗塁死には「Cs」といった記号が用意されています。
| スクイズの結果 | 打者側の基本的な記録 | 三塁走者側 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 投手前に成功し打者が一塁アウト | 「1-3」などを犠打として記録 | 本塁への進塁・得点 | 典型的な成功例 |
| 三塁手前に成功し打者が一塁アウト | 「5-3」などを犠打として記録 | 本塁への進塁・得点 | 実際に処理した野手を書く |
| 本塁へ送球したが三塁走者セーフ | 犠打+野手選択となる場合がある | 得点 | 打者がセーフでも犠打になる場合あり |
| バントして三塁走者が本塁アウト | 原則として犠打にしない | 本塁でアウト | 打者には打数が付くのが基本 |
| スクイズを空振りし走者が帰塁 | バント空振りのストライク | 三塁に残る | 打席は継続 |
| 空振りし走者が本塁アウト | バント空振り+状況に応じた記録 | 典型例ではCs | 暴投・捕逸などでは例外あり |
| 2ストライク後にバントファウル | 三振 | 状況に応じて記録 | スリーバント失敗 |
| 守備側が処理をミス | 犠打+失策など | 得点・進塁 | ミスがなくても進塁できたかで変わる |
この記事では、NPB式スコアブックを基準として、なぜその記録になるのかまで順番に説明します。
スクイズのスコアは「SQ」より実際のプレーを記録する
スクイズのスコアで最初に押さえたいのは、「作戦の名前」と「スコアブックに残す記録」は同じものではないという点です。
監督からスクイズのサインが出ていたとしても、バントが成功したのか、空振りしたのか、三塁走者がアウトになったのかによって公式記録はまったく変わります。
成功したスクイズは基本的に犠牲バントとして書く
0アウトまたは1アウトで、打者が走者を進めるためにバントし、打者自身が一塁でアウトになる、または失策がなければアウトになっていたと判断される場合、公式記録では犠牲バントになります。
NPBの公認野球規則9.08でも、この条件で犠牲バントを記録すると定められています。
一死三塁から投手前へスクイズし、投手が一塁手へ送球して打者をアウトにする間に三塁走者が生還したなら、プレーの骨格は「1-3」です。
NPB式では犠打の場合、アウトの種類を四角で囲んで記録します。NPBの公式マニュアルでも、三塁手前へバントして走者を進め、5-3で打者がアウトになった例について、「5-3」を四角で囲む記入例が示されています。
「スクイズだから特殊な記号を書く」と考えるより、誰が打球を処理し、誰へ送球し、どこでアウトになったかを書いたうえで犠打を示す、と覚えるほうが間違いません。
SQはNPB式の必須記号ではない
スクイズのスコアを調べると、「SQ」「S.Q.」という表記を目にすることがあります。
ただし、少なくともNPBが公開している「NPB式スコアブックの記入方法」では、スクイズ専用の「SQ」は標準記号として示されていません。
公開マニュアルでは、犠打はアウトの種類を四角で囲み、バントヒットは「BH」、野手選択は「Fc」、盗塁死は「Cs」などとして記録します。
SQだけを書いてプレーの記録を終えないようにしましょう。
所属チームでSQを補助記号として使う決まりがある場合でも、「1-3の犠打」「5-3の犠打」など、実際のプレーが読み取れる記録を残すことが先です。
スコアの方式によって書き方に違いがある
スコアブックには複数の記入方式があります。
NPBの公式マニュアルでは、代表的なものとして「慶応式」と「早稲田式」があり、NPBの公式記録員は慶応式を使用し、一般には早稲田式も広く普及していると説明されています。
全日本野球協会も、以前は野球のスコアに独自の記入方法が多く、統一された方法が確立されていなかったことから、日本野球協議会の記録部会監修によるプロ・アマ統一解釈のマニュアルを制作したと説明しています。
そのため、市販のスコアブックやチーム独自の用紙で細かな形が違っていても不思議ではありません。
本記事では記号の形だけを丸暗記するのではなく、どの方式にも応用しやすいように、公式記録として何が起きたのかを判断してから記入する方法を中心に説明します。
NPB式スコアブックで覚えておきたいスクイズの記号
スクイズを正しく書くには、守備番号とバントに関係する基本記号を知っておく必要があります。
すべてのスコア記号を暗記する必要はありません。「誰が処理したか」「犠打か」「野選か」「盗塁死か」を読めるだけで、スクイズの大半は記録できます。
- 1-3:投手から一塁手への送球
- 5-3:三塁手から一塁手への送球
- 2-3:捕手から一塁手への送球
- BH:バントヒット
- Fc:野手選択
- Cs:盗塁死
守備番号は1から9で表す
NPB式では、各守備位置を次の数字で表します。
| 番号 | 守備位置 |
|---|---|
| 1 | 投手 |
| 2 | 捕手 |
| 3 | 一塁手 |
| 4 | 二塁手 |
| 5 | 三塁手 |
| 6 | 遊撃手 |
| 7 | 左翼手 |
| 8 | 中堅手 |
| 9 | 右翼手 |
たとえば投手が打球を捕り、一塁手へ送球してアウトなら「1-3」です。
三塁手から一塁手なら「5-3」、捕手がバントを処理して一塁手へ送れば「2-3」となります。
重要なのは、スクイズの種類を見分けることより、実際にボールがどの野手からどの野手へ渡ったかを見ることです。
ベースカバーに入った野手にはA・B・C・Hを付ける
スクイズでは一塁手や三塁手が前へダッシュするため、普段とは違う野手がベースカバーへ入ることがあります。
NPB式では、本来の守備位置ではない塁をカバーしたとき、一塁なら「A」、二塁なら「B」、三塁なら「C」、本塁なら「H」を守備番号の後ろに付けます。
たとえば投手がスクイズの打球を処理し、二塁手が一塁ベースをカバーしてアウトにしたなら「1-4A」と表せます。
NPBの実際の記入例でも、投手前の犠打を投手が処理し、二塁手が一塁ベースカバーへ入って「1-4A」と送球されたケースが掲載されています。
「投手前のスクイズは1-3」と決めつけず、ベースカバーまで見ておくと正確です。
犠打はアウトの記録を四角で囲む
NPB式では、ゴロで打者がアウトになった場合、送球の順番を守備番号で書きます。
そのうえで犠打の場合は、アウトの種類を四角で囲みます。
したがって、三塁手前のスクイズで5-3なら、単なる三ゴロの「5-3」と区別するため、5-3を犠打として囲みます。
バントの空振りとバントファウルには専用のカウント記号がある
NPB式では、通常の空振りストライクとは別に「バントを試みたが空振りしたストライク」の記号があります。
同様に、通常のファウルとは別に「バントを試みたがファウルになった」ことを示す記号も用意されています。
打者が空振りしても三塁走者が帰塁して打席が続く場合、「スクイズ失敗」と打席結果を完成させるのではなく、まずその1球をバント空振りのストライクとしてカウント欄へ記録します。
野手選択はFc、盗塁死はCsと記録する
NPB式では、野手選択を「Fc」、盗塁を「O」、盗塁死を「Cs」と表します。
スクイズでは、守備側が一塁ではなく本塁の走者を刺そうとして打者が一塁へ生きるケースや、打者が空振りして三塁走者が本塁でアウトになるケースがあるため、この2つは特に重要です。
スクイズを空振りして走者がアウトになったからといって、すべて機械的にCsになるわけではありません。
走者がいつスタートしたのか、投球が暴投・捕逸になったのかによって公式記録が変わります。
スクイズ成功時のスコアブックの書き方
典型的なスクイズ成功は、それほど難しくありません。
打球を処理した野手から送球先までを守備番号で書き、犠打を示し、三塁走者には本塁への進塁と得点を記録します。
- 投手前 → 1-3の犠打
- 三塁手前 → 5-3の犠打
- 捕手前 → 2-3の犠打
- 二塁手が一塁カバー → 1-4Aなど
投手前へのスクイズ成功なら「1-3」などと書く
一死三塁で打者が投手前へスクイズをしたとします。
投手が打球を処理して一塁手へ送り、打者走者がアウトになる間に三塁走者が生還すれば、打者欄は「1-3」の犠打です。
NPB式なら1-3を四角で囲み、何個目のアウトになったかも記録します。
三塁走者側には本塁へ進んだことと得点を記録します。
記入例
- 打者欄:1-3を犠打として記録
- 走者欄:三塁から本塁への進塁を記録
- 得点:三塁走者に得点を記録
三塁手前なら「5-3」、捕手前なら「2-3」
スクイズの打球が三塁線へ転がり、三塁手が処理して一塁へ送れば「5-3」です。
捕手の前へ転がり、捕手が処理して一塁へ送れば「2-3」になります。
どこに転がす予定だったかではなく、実際にどの野手が処理したかを記録してください。
二塁手が一塁ベースカバーなら「1-4A」になる
スクイズでは一塁手が前進するため、二塁手が一塁ベースへ入るケースがあります。
投手がバントを処理し、二塁手が一塁をカバーして打者をアウトにしたなら「1-4A」です。
NPB式では「A」が一塁ベースカバーを表します。
試合中に「投手が捕った」だけを見てすぐ1-3と書くのではなく、最後に誰が一塁で送球を受けたかまで確認してから記入すると修正が減ります。
本塁へ送球したが走者セーフなら犠打になる場合がある
スクイズで守備側が本塁の走者を刺そうとすることもあります。
たとえば投手がバントを処理し、本塁へ送球したものの三塁走者がセーフとなり、打者走者も一塁へ生きたケースです。
この場合、「打者が一塁でアウトになっていないから犠打ではない」とは限りません。
公認野球規則9.08(b)では、0アウトまたは1アウトで、バントを処理した野手が先行走者をアウトにしようとして失敗した場合でも、普通の守備なら打者を一塁でアウトにできたと判断されれば犠牲バントを記録します。
NPB式では野手選択をFcと表すため、最終的な公式記録を確認して記入します。
打者まで一塁セーフならバントヒットの可能性もある
同じように三塁走者が生還し、打者も一塁セーフになったとしても、必ず犠打野選になるわけではありません。
バントそのものが非常によく、普通の守備をしても打者を一塁でアウトにすることが不可能だったと記録員が判断した場合は、犠打ではなく単打になります。
NPB式では、犠打にならないバントのゴロによる安打を「BH」と表します。
- 普通に一塁へ投げればアウトだったが、本塁へ投げたため打者が生きた → 犠打+野手選択となる可能性
- 普通に守っても打者を一塁でアウトにできなかった → バントヒットとなる可能性
- 一塁で打者アウト、三塁走者が生還 → 通常の犠牲バント
見た目がすべて「スクイズ成功」でも、スコア上の記録は同じではありません。
スクイズ失敗時のスコアは「なぜ失敗したか」で変わる
「スクイズ失敗」という専用の一つの記号があるわけではありません。
バントはフェアになったものの走者が本塁でアウトになったのか、フライになったのか、空振りしたのかによって記録方法は変わります。
「スクイズをした=犠打」と判断しないことが重要です。
失敗した原因と、最終的に打者・走者がどうなったかを分けて確認します。
バントしたが三塁走者が本塁アウトなら原則として犠打にならない
一死三塁でスクイズを行い、打者が投手前へバントしたとします。
投手が本塁へ送球し、三塁走者が捕手にタッチされてアウトになった場合、スクイズという作戦は失敗です。
公認野球規則9.08(c)では、バントによって次の塁へ進もうとした走者のうち1人でもアウトにされた場合、原則として打者には犠牲バントを記録せず、打数を記録するとしています。
つまり、「バントをした」というだけで犠打として囲んではいけません。
打者走者がその間に一塁へ生きれば、実際の守備プレーと野手選択などを記録し、三塁走者側には本塁でアウトになった経過を書きます。
本塁アウトなら「誰から誰へのプレーか」を走者欄に残す
投手がスクイズの打球を捕り、捕手へ送球して三塁走者をアウトにしたなら「1-2」です。
三塁手が処理して捕手へ送れば「5-2」となります。
打者のマスだけに「スクイズ失敗」と書いてしまうと、投手が本塁へ投げたのか三塁手が投げたのか、どこでアウトになったのかが残りません。
スコアブックの目的は、後からプレーを再現できるようにすることです。
バントが小フライになって捕球されたらフライアウト
スクイズのバントが浮き、投手・捕手・一塁手・三塁手などに直接捕球された場合、打者はフライアウトです。
このケースでは走者を安全に進めた犠打ではないため、通常の成功したスクイズと同じ記録にはしません。
さらに三塁走者がスタートしていて帰塁できず、送球でアウトになれば併殺になる可能性があります。
その場合も「スクイズ失敗」と一括せず、打者のフライアウトと三塁走者の帰塁失敗によるアウトを別々に記録します。
2ストライク後のバントファウルは三振になる
スクイズを仕掛けたとき、すでに2ストライクなら特に注意が必要です。
公認野球規則9.15では、2ストライク後に打者がバントを企て、その打球がファウルボールになった場合は三振を記録すると定められています。
2ストライク後のバントファウル=スリーバント失敗による三振です。
ただし、ファウルフライを野手が直接捕球した場合は三振ではなく、その野手によるフライアウトとして記録します。
スクイズを空振りしたときのスコアの書き方
スクイズの空振りは、打者と三塁走者を同時に追う必要があるため、スコア初心者が混乱しやすい場面です。
打者には投球結果を、三塁走者には走塁結果を別々に記録すると整理しやすくなります。
空振りしただけならバント空振りのストライクを記録する
0ストライクまたは1ストライクからスクイズを試み、打者が空振りしたものの三塁走者が無事に戻った場合、打席は終了していません。
打者のカウント欄へ、その1球が「バントを試みたが空振りしたストライク」であることを記録します。
0ストライク・1ストライクからの空振りなら、まずは1球の結果として記録するだけです。三塁走者が戻れば打席はそのまま続きます。
空振りして三塁走者が本塁アウトなら走塁結果も記録する
スクイズでは投球に合わせて三塁走者が本塁へスタートします。
打者が空振りし、捕手が走者へタッチしてアウトにした場合、打者側にはバント空振りのストライク、走者側には本塁でのアウトを記録します。
走者が投球前から本塁を狙ってスタートしており、セーフなら盗塁が記録される走塁だった場合、アウトになれば盗塁刺の対象になります。
NPB式スコアブックでは、この盗塁死を「Cs」と表します。
スクイズ空振りでも必ずCsになるわけではない
「スクイズを空振りした」「三塁走者が本塁でアウトになった」という2つの事実だけで、必ずCsと決めることはできません。
捕手が投球をそらしたのを見てから走り出した走者がアウトになった場合など、セーフでも盗塁が記録されない走塁であれば盗塁刺も記録しません。
走者が投球前からスタートしていたのか、投球が捕手を逸れた後に本塁を狙ったのか、暴投・捕逸が絡んでいるのかまで確認する必要があります。
投球が暴投や捕逸になった場合は記録が変わる
公認野球規則9.07では、走者が投手の投球より前に次の塁へスタートしていた場合、投球が結果的に暴投や捕逸となっても、原則として走者には盗塁を記録する考え方が示されています。
一方、捕手が投球をそらしたことを見てから走り出した場合などは扱いが異なります。
少年野球などで判断に迷ったら、まず次の2点をメモしておきましょう。
- 走者はいつスタートしたか
- 投球は通常なら捕球できるボールだったか
2ストライクから空振りすれば三振
2ストライクからスクイズを試み、バットに当たらず空振りすれば第3ストライクなので三振です。
三塁走者が同時に本塁へ突入している場合は、打者の三振とは別に走者へのプレーが続くことがあります。
たとえば打者が三振となり、その後三塁走者も本塁でアウトになれば、一つの投球をきっかけに2個のアウトが成立する可能性があります。
スコアでは、打者に三振、走者に本塁でのアウトをそれぞれ記入します。
スクイズでエラーが出たときのスコアの書き方
スクイズのエラーは、「野手がボールを落としたからE」と判断すると間違えることがあります。
公式記録では、そのミスがなければ打者や走者をアウトにできたのか、ミスがなくても進塁できたのかを考える必要があるからです。
- ミスがなければ打者は一塁でアウトだったか
- ミスがなければ三塁走者は本塁でアウトだったか
- ミスがなくても三塁走者は得点できたか
- ミスによって余分な塁まで進んだか
打者が失策で一塁に生きても犠打になる場合がある
0アウトまたは1アウトで、打者が明らかに走者を進めるためにバントし、通常なら打者走者を一塁でアウトにできたものの、野手の悪送球や落球で打者が一塁へ生きたとします。
公認野球規則9.08(a)では、「失策がなければ一塁でアウトになったと思われる場合」も犠牲バントの対象です。
打者が一塁セーフだから犠打ではない、とは限りません。犠打と失策が同時に記録されるケースがあります。
三塁走者が本来アウトだったのにエラーで助かった場合は犠打にならないことがある
反対に、スクイズの打球で本塁へ進んだ三塁走者が、通常ならアウトになるタイミングだったにもかかわらず、捕手の落球や悪送球によってセーフになったケースがあります。
公認野球規則9.08(c)の注では、走者が当然アウトになるはずだったのに守備側のミスで生きた場合、原則として犠牲バントを記録せず、守備側に失策を記録するとしています。
ここが「打者がエラーで一塁へ生きたケース」と大きく違うところです。
ミスがなくても走者がセーフなら犠打と失策が両方付く場合がある
守備側のミスがあったとしても、そのミスがなくても走者は安全に進塁できたと判断される場合には犠牲バントを記録します。
そのうえで、ミスによって走者がさらに余分な塁を得たのであれば失策も記録します。
「エラーがあった=犠打は消える」「スクイズだった=必ず犠打」という単純なルールでは処理できません。
捕手が本塁送球を落としても必ずエラーとは限らない
スクイズの本塁クロスプレーでは、捕手が送球を落とすことがあります。
見た目だけなら捕手の失策に見えますが、送球を完全に捕球していても走者をアウトにできたか判断できないタイミングなら、失策にならない場合があります。
NPBの公式記録員が2026年4月に紹介した過去の実例では、スクイズで本塁への送球を捕手が落球したものの、「アウトになるかどうかわからないタイミング」だったことから、捕手の失策ではなく犠打野選と判定したケースが紹介されています。
この実例からも、スコアは「落とした」「悪送球した」という見た目だけで判断しないことがわかります。
公式記録が発表される試合なら、判断が微妙なプレーはその場で無理に確定せず、速報や公式記録で最終確認するのが確実です。
スクイズの成功・失敗・空振りをケース別に確認
ここまでのルールを、実際の試合中に使いやすい形へまとめます。
細かな記号の配置は使用するスコアブックによって変わりますが、「公式記録として何を残すか」は共通して考えられます。
スクイズのスコア早見表
| 場面 | 打者欄 | 走者欄 | 犠打 |
|---|---|---|---|
| 一死三塁、投前バント、1-3で打者アウト、走者生還 | 1-3を犠打として記録 | 本塁進塁・得点 | 〇 |
| 一死三塁、三塁手が処理、5-3で打者アウト | 5-3を犠打として記録 | 本塁進塁・得点 | 〇 |
| 投手が処理、二塁手が一塁カバー | 1-4Aを犠打として記録 | 本塁進塁・得点 | 〇 |
| 本塁送球が間に合わず走者セーフ | 犠打+Fcなどを確認 | 得点 | 〇になる場合あり |
| 普通の守備でも打者を一塁アウトにできないバント | BH | 得点 | × |
| 本塁送球で三塁走者アウト | 野手選択など実際の結果 | 1-2、5-2など | 原則× |
| 空振り、三塁走者帰塁 | バント空振りストライク | 三塁に残る | ― |
| 空振り、本塁突入した走者アウト | バント空振りストライク | 条件を満たせばCs | ― |
| 2ストライク後にバントファウル | 三振 | 状況に応じて記録 | × |
| バントフライを捕球 | フライアウト | 帰塁状況を記録 | × |
| 打者が一塁で本来アウトだが悪送球で出塁 | 犠打+失策の可能性 | 得点・進塁 | 〇の場合あり |
| 三塁走者が本来アウトだが失策で生還 | 公式記録に従い失策等 | 得点 | 犠打にならない場合あり |
「一塁で打者がアウトになったか」だけでは犠打を判断できません。
本塁への送球を選んだケースやエラーが絡むケースでは、「普通の守備ならどうなっていたか」という判断も必要になります。
スクイズを記録する5つの判断順序
複雑なケースをすべて丸暗記しようとすると、少し変わったプレーが起きただけで手が止まります。
スクイズが起きたら、決まった順番でプレーを分解するほうが確実です。
最初にバットへ当たったかを見る
まず確認するのは、打者がバントをしたのか、空振りしたのか、ファウルになったのかです。
これによって「打球のプレー」を記録するのか、「投球結果」を記録するのかが決まります。2ストライクなら三振になる可能性もあるため、現在のカウントも確認します。
次に誰が打球を処理したかを見る
フェアのバントになったら、打球を最初に処理した野手を確認します。投手なら1、捕手なら2、一塁手なら3、三塁手なら5です。
スクイズでは一・三塁手が前進するため、投手や捕手が処理するケースも多くあります。まず「最初に触った野手」を押さえましょう。
送球先とベースカバーを見る
次に、どこへ送球したかを確認します。一塁なら打者走者へのプレー、本塁なら三塁走者へのプレーです。
一塁へ送った場合も、一塁手がベースにいるとは限りません。二塁手が一塁をカバーしていれば4Aなど、実際の守備者を記録します。
打者と三塁走者の結果を別々に確認する
打者はアウトなのか、安打なのか、野手選択なのか、失策で出塁したのかを見ます。
同時に三塁走者は得点したのか、本塁でアウトになったのか、三塁へ帰塁したのかを確認します。一つのプレーで二人の結果が動くため、打者欄だけを見ないことが大切です。
最後に犠打・野選・失策などを確定する
プレーの事実をすべて書いた後で、公式記録上の分類を確定します。
犠打、BH、Fc、Cs、失策など、最終的にどの記録が付いたのかを確認してください。
最初から「これはSQだからこの記号」と考えないことがポイントです。
プレーを事実から順番に組み立てれば、成功・失敗・空振り・エラーのほとんどに対応できます。
少年野球でスクイズのスコアを書くときのコツ
少年野球では、試合を見ながら初めてスコア係を担当することもあります。
スクイズは打者・三塁走者・捕手・内野手が一斉に動くため、その場ですべて完成させようとすると書き漏らしやすくなります。
スクイズのサインを見抜こうとしなくていい
スコアラーに必要なのは、ベンチがどんなサインを出したかを当てることではありません。
実際に起きたプレーを記録することです。
打球を誰が捕り、どこへ投げ、打者と走者がどうなったかがわかればスコアは書けます。
「今のはスクイズだったのかな」と考えている間に送球先を見失うより、まずボールを追い、誰がどこへ投げたかを見ることを優先しましょう。
プレーが速すぎたら事実だけメモして後から整える
たとえば一死三塁で投手前へバントされ、投手が本塁へ投げたものの捕手がボールを落とし、三塁走者が生還したとします。
その瞬間に「E2なのかFcなのか」と判断する必要はありません。
- 投手前バント
- 投手から本塁へ送球
- 三塁走者は生還
- 打者も一塁セーフ
- 捕手が送球を保持できなかった
プレーが止まってから犠打、野選、失策のどれになるかを整理すれば十分です。
特に失策かどうかは「普通の守備ならアウトにできたか」という判断が絡むため、急いで確定しないほうが正確です。
チーム内で補助記号の使い方をそろえる
NPB式とは別に、チーム独自でSQなどの補助メモを使っている場合も、最も大切なのはチーム内で意味が共有されていることです。
全日本野球協会が統一マニュアルを制作した理由の一つも、従来のスコアには独自の記入方法が多く存在していたためです。
NPB式を使うならNPB式、所属チームで指定方式があるならその方式に合わせましょう。
スクイズのスコアでよくある間違い
スクイズのスコアは、「作戦名だけを見る」「一塁がセーフかアウトかだけを見る」と間違えやすくなります。
特に犠打・野手選択・安打・失策の境界は、実際のプレーを最後まで確認する必要があります。
- 「SQ」と書くだけで終わらせる
- 打者が一塁セーフならすべてヒットにする
- 守備がボールを落としたら必ずエラーにする
- 空振りしたらすぐ打席を終了させる
- バントしたら何でも犠打にする
「SQ」と書くだけで終わらせる
SQだけでは、打球を誰が処理したのか、どこへ送球したのか、打者がアウトになったのかまで読み取れません。
NPB式の公開マニュアルでは、犠打は実際のアウトプレーを書いて四角で囲む方式です。
SQを自分のメモとして使う場合でも、「1-3の犠打」など本来必要な記録を省略しないようにしましょう。
打者が一塁セーフならすべてヒットにする
スクイズで本塁への送球を選んだ結果、打者が一塁へ生きることがあります。
この場合、普通なら打者を一塁でアウトにできたのであれば犠打として記録される可能性があります。
一方、普通に守っても一塁でアウトにできなかったほど良いバントなら安打です。「一塁セーフ=BH」と機械的に処理しないでください。
守備がボールを落としたら必ずエラーにする
本塁で捕手がボールを落としたとしても、捕球していても走者がセーフになるタイミングなら失策にならない可能性があります。
失策を付けると個人の守備成績や自責点にも影響するため、見た目だけで判断しないことが大切です。
空振りしたらすぐスクイズ失敗として打席を終える
0ストライクや1ストライクからのスクイズ空振りなら、単にストライクが一つ増えただけで打席は続きます。
三塁走者がアウトになったとしても、打者自身の打席が終了したとは限りません。打者と走者の結果を分けて書きましょう。
バントしたら何でも犠打にする
公式記録上の犠牲バントは、0アウトまたは1アウトであることや、走者を進めるためのバントであることなどの条件があります。
また、バントで次塁へ進もうとした走者がアウトになれば、原則として犠打にはなりません。
そのため「バント=犠打」ではありません。スクイズの記録を正しく付けるなら、作戦ではなくプレーの結果まで見る必要があります。
スクイズは打点や打数にどう影響する?
スクイズをスコアブックへ記録すると、打点や打数についても気になるところです。
ここでは、スコアを書くために必要な範囲に絞って確認します。
正式な犠打なら打数には入らない
NPBは打率について、打席数から犠打・犠飛・四死球などを除いたものが打数になると説明しています。
したがって、スクイズが正式に犠牲バントとして記録された場合、その打席は打数には入りません。
一方、スクイズを試みても走者が本塁でアウトになり、犠打が付かなければ、打者には打数が記録されます。
スクイズ成功では打点が付くのが基本
典型的なスクイズ成功なら、三塁走者を犠牲バントによって生還させた打者に打点が付きます。
ただし、失策が得点の原因になったケースなどでは判断が変わります。
打点・打数・打率についてさらに詳しく知りたい場合は、別記事「スクイズは打点・打数になる?打率・記録の扱い」で確認すると整理しやすくなります。
2アウトでのスクイズは犠打になる?
2アウトでスクイズに近いバントを行った場合も、スコア上の扱いには注意が必要です。
公認野球規則9.08が犠牲バントの対象としているのは0アウトまたは1アウトの場面です。
2アウトでは通常の犠牲バントとして記録しない
2アウトでは打者が一塁でアウトになれば、その時点でイニングが終了します。
三塁走者が本塁に到達していたとしても、第3アウトの成立方法によっては得点も認められません。
0アウト・1アウトで行う典型的な犠牲バントとは公式記録上の前提が異なります。
2アウト、満塁、ツーランスクイズ、反則などは「満塁でスクイズするとどうなる?2アウト・ツーラン・反則時の扱い」で詳しく確認するとわかりやすいでしょう。
スクイズのスコアの書き方でよくある質問
最後に、実際にスコアブックを付けていると迷いやすい疑問をまとめます。
記号そのものだけでなく、「何を基準に判断するか」を押さえておけば、初めて見るケースにも対応しやすくなります。
- スクイズの正式な記号はSQですか?
-
NPB式の公開スコアブックマニュアルでは、スクイズ専用の「SQ」は標準記号として示されていません。
NPB式では、実際の守備プレーを「1-3」「5-3」などで記録し、犠打ならアウトの種類を四角で囲みます。チーム独自でSQを補助メモに使う場合でも、それだけで記録を終えないようにしましょう。
- スクイズ成功なら必ず犠打になりますか?
-
典型的なスクイズ成功は犠牲バントになりますが、すべてではありません。
普通の守備をしても打者を一塁でアウトにできないバントなら単打になる可能性があります。一方、本塁へ送球したため打者が一塁へ生きても、通常なら一塁でアウトにできたなら犠打になる場合があります。
- スクイズが失敗して走者が本塁アウトなら犠打ですか?
-
原則として犠打にはなりません。
バントで次塁へ進もうとした走者がアウトになった場合は、打者に打数を記録し、犠牲バントとはしないのが基本です。
- スクイズを空振りしたときはどう書きますか?
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まず打者のカウント欄に、バントを試みて空振りしたストライクを記録します。
三塁走者が帰塁すればそのまま打席継続です。本塁でアウトになれば、走者側にも実際のアウトを記入します。
- スクイズ空振りで三塁走者がアウトなら必ずCsですか?
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必ずではありません。
投球より前から本塁へスタートし、セーフなら盗塁となる走塁だった場合は、アウトになれば盗塁刺となるのが基本です。一方、捕手が投球をそらしたのを見てから走り出した場合などは扱いが異なります。
- 2ストライクからスクイズをファウルしたらどうなりますか?
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2ストライク後にバントを企て、ファウルボールになれば三振です。
ただし、ファウルフライとして野手が直接捕球した場合は三振ではなく、その野手によるフライアウトとして扱います。
- スクイズで打者がエラーによって一塁セーフなら犠打は消えますか?
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必ずしも消えません。
失策がなければ打者が一塁でアウトになっていたと判断され、走者を進める目的のバントであれば犠打を記録できます。一方、本来アウトになるはずだった先行走者が失策で助かったケースなどは、犠打にならない場合があります。
- 少年野球でも同じ考え方で書けますか?
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基本となる考え方は同じです。
守備番号、打者と走者の結果、犠打・野選・失策などを順番に整理すれば記録できます。ただし、使用するスコアブックや大会・チームで記入方式が指定されている場合は、その方式を優先してください。
スクイズのスコアは「誰が捕り、どこへ投げ、誰がどうなったか」で書く
スクイズのスコアの書き方で最も大切なのは、SQなど作戦名の記号から考えるのではなく、実際に起きたプレーを順番に記録することです。
典型的なスクイズ成功なら、投手から一塁手への送球は「1-3」、三塁手から一塁手なら「5-3」、投手から一塁ベースカバーの二塁手なら「1-4A」というように書き、犠打であることを示します。
一方、本塁へ送球して三塁走者がアウトになれば原則として犠打ではなくなり、空振りなら打者のストライクと走者の結果を別々に記録します。
守備側のエラーが絡んだ場合には、ミスがなくても打者や走者をアウトにできたかを確認しなければなりません。
迷ったら、この5つの順番へ戻りましょう。
- バットに当たったのか、空振り・ファウルだったのか
- 最初にどの野手がボールを処理したのか
- どこへ送球し、誰がベースカバーへ入ったのか
- 打者と三塁走者はそれぞれどうなったか
- 最後に犠打、BH、Fc、Cs、失策などの公式記録を確定する
この順番なら、スクイズ成功だけでなく、失敗、空振り、スリーバント失敗、犠打野選、エラーまで一つの考え方で記録できます。
スクイズ自体の意味や通常のバントとの違いを確認したい場合は「野球のスクイズとは?意味・基本ルール・種類と目的」へ、打点・打数を詳しく知りたい場合は「スクイズは打点・打数になる?打率・記録の扱い」へ進むと、スコアと公式記録の関係をさらに整理しやすくなります。




