甲子園のクーリングタイムは逆効果?高校野球での効果・足がつる理由と熱中症対策、「いらない・なし」論を検証

甲子園のクーリングタイムは逆効果?高校野球での効果・足がつる理由と熱中症対策、「いらない・なし」論を検証

夏の甲子園を見ていて、「クーリングタイムの直後なのに足をつる選手がいるなら、むしろ逆効果なのでは?」と疑問に感じた人もいるのではないでしょうか。

実際、甲子園でクーリングタイムが初めて導入された2023年には、5回終了後の休憩を挟んだ6回から足をつる選手が相次ぎ、大会本部が大会途中で軽運動を促す運用を追加しました。

選手からも「体が冷えて動きにくい」「必要ない」といった趣旨の声が報じられており、「クーリングタイムはいらないのでは」「なしにしたほうがよいのでは」という疑問が出ること自体には理由があります。

この記事の結論

クーリングタイムそのものが足のけいれんを引き起こし、熱中症対策として逆効果になっていると断定できる根拠はありません。

身体冷却や休息、水分・塩分補給には暑熱環境での熱負荷を抑える意味があります。一方で、選手から「体が冷える」という声があるのも事実です。

そのため重要なのは、クーリングタイムを「する・しない」の二択ではなく、冷却方法・休憩時間・再ウォームアップまで含めて運用することです。

2024年夏の甲子園後に代表49校の部長・監督を対象として行われた主催者アンケートでは、報道によると82%がクーリングタイムについて「効果があった」と回答しています。

その一方で、「冷やしすぎや寒暖差が不安」「10分は長すぎる」「個人差があるので時間の使い方をチームに任せてほしい」といった意見も出ました。

実際に大会側も制度を固定したままにはしていません。2024年にはクーリングタイム終了前からウォームアップできるルールを設定し、2025年からは従来の10分間を8分間へ短縮しました。

2026年の第108回全国高校野球選手権大会でも、8分間のクーリングタイムが継続されています。

この記事では、甲子園のクーリングタイムが逆効果と言われるようになった理由を起点に、実際の効果、足がつる問題、熱中症との関係、「いらない・なしでよい」という不要論、そして現在の改善策まで詳しく見ていきます。

クーリングタイムそのものの意味や実施時間、何回行われるのか、いつから導入されたのかを先に知りたい場合は、親記事「クーリングタイムとは?甲子園・高校野球では何分?回数・いつから導入されたか」で基本ルールを確認すると理解しやすくなります。

目次

甲子園のクーリングタイムは逆効果とは言い切れない

最初に押さえておきたいのは、「クーリングタイム明けに足をつった選手がいた」という事実と、「クーリングタイムが原因で足をつった」という因果関係は別だという点です。

一方で、選手が実際に「体が冷える」「動きにくい」と感じている以上、競技再開への影響を無視することもできません。

クーリングタイムは逆効果?

熱中症対策そのものとして逆効果とは断定できません。

身体を冷やす効果はある?

暑熱環境で熱負荷を下げる方法として合理性があります。

クーリングタイムで足がつる?

直接の原因とは証明されていません。

休むと体が動かなくなる?

長い休止後は再ウォームアップを考える必要があります。

クーリングタイムはいらない?

不要論はありますが、代表校アンケートでは効果を認める回答が多数でした。

クーリングタイムなしが安全?

熱を逃がす機会も減るため、単純に廃止すれば安全になるとはいえません。

大切なのは、クーリングタイムの目的が「選手をできるだけ冷たくすること」ではない点です。

暑熱環境の中で上昇した熱負荷を軽減し、水分や塩分を補給しながら体調を確認し、後半の競技へ安全に戻すための時間です。

現在の甲子園では冷房の効いたスペースへの移動だけでなく、着替え、手のひらや頸部の冷却、アイススラリー、スポーツ飲料、経口補水液などを組み合わせています。

「8分間休んだかどうか」だけではなく、その8分間をどう使ったのかまで見ることが重要です。

なぜ甲子園のクーリングタイムは逆効果と言われるのか

「甲子園のクーリングタイムは逆効果」という疑問が広がった大きなきっかけは、制度導入初年度の2023年にあります。

当時は5回終了後に10分間のクーリングタイムを設けていましたが、その直後から足をつる選手が目立ちました。大会側もこの状況を受けて運用を変更しています。

導入初年度にクーリングタイム直後の足のけいれんが目立った

2023年の第105回全国高校野球選手権大会では、暑さ対策として5回終了時に10分間のクーリングタイムが初めて設けられました。

選手はベンチ裏へ移動し、理学療法士の指導のもとで体温の確認や身体冷却などを行う仕組みでした。

ところが大会初日には、クーリングタイム終了後の6回から足をつる選手が複数見られました。

大会本部はその後、身体冷却中にも足首の上下運動や膝の屈伸、ストレッチを行い、グラウンドへ戻る前には軽くジャンプしてふくらはぎを動かすよう呼びかける運用を追加しています。

  • 冷房の効いた場所で休んだことで筋肉が冷えたのではないか
  • 10分間動かなかったことが影響したのではないか
  • 冷却用品を使いすぎたのではないか
  • クーリングタイムそのものが足のけいれんを誘発したのではないか

こう考えたくなるのも無理はありません。

ただし、「クーリングタイム後に足をつった」ことと、「クーリングタイムが原因で足をつった」ことは同じではありません。

大会本部が軽運動を追加したことも、クーリングタイムが原因だと医学的に証明されたことを意味するものではありません。

実際に起きた問題を受けて、身体を冷やすだけの時間ではなく、競技再開への準備も含めた時間へ運用を改善したと理解するほうが正確です。

選手自身からも「体が冷える」という声が出ていた

逆効果という話は、外部の観戦者だけが作ったものでもありません。

2023年大会を取材したNumber Webでは、クーリングタイム明けについて選手から「体が冷えてしまう」「10分間の過ごし方を変えてもうまくいかない」といった趣旨の声が出ていたことが紹介されています。

さらに、体が冷えることで動きにくくなり、けがへの不安も感じるため必要性に疑問を持っている、という選手の意見も報じられました。

この現場感覚は軽視すべきではありません。

特に野球は、休憩後すぐに投球、ダッシュ、打球への反応、スライディングなど高い出力が必要になる競技です。

問題は「身体を冷却すること」そのものより、どの程度冷やし、いつまで冷やし、再開直前に何をするかにあります。

試合の流れが切れることも「逆効果」と感じる理由になる

クーリングタイムへの違和感には、身体面だけでなく試合展開の問題もあります。

5回まで好投していた投手が長い休憩を挟んだ後に制球を乱したり、勢いのあった打線が止まったりすれば、「クーリングタイムで流れが変わった」と感じることがあります。

実際、導入初年度には指導者からもクーリングタイム後の試合の流れを気にする声が報じられています。

ただし、「試合のリズムが変わること」と「熱中症対策として逆効果であること」は同じではありません。

安全対策には一定の中断が必要になる一方、競技性への影響をできるだけ小さくする工夫も必要です。

49校へのアンケートでは82%が「効果があった」と回答

「クーリングタイムは本当に効果があるのか」を考えるうえで参考になるのが、実際に甲子園へ出場した学校側の評価です。

選手個人には否定的な声がある一方、代表校全体で見ると異なる結果も出ています。

2024年の代表49校の部長・監督へのアンケートでは、82%がクーリングタイムに「効果があった」と回答しています。

現場から逆効果という声がある一方、学校側全体では暑さ対策として一定の効果を感じたケースのほうが多かったことになります。

同じアンケートでは、試合中に着替えられるよう背番号が2枚配布されたことについても評価が高かったとされています。

汗で濡れたアンダーシャツやユニホームを交換できることは、クーリングタイムを単なる休憩ではなく、コンディションを整える時間として使いやすくします。

82%が評価していても課題がなくなったわけではない

一方、このアンケートで重要なのは「82%」だけではありません。

  • 冷やしすぎや急な寒暖差が心配
  • 選手ごとに状態が異なるため時間の使い方に裁量がほしい
  • 救援投手の準備時間を長くしてほしい
  • 10分間は長すぎる

つまり、「クーリングタイムに効果がある」と回答したチームが、当時の運用を無条件に肯定していたとは限りません。

アンケートから分かること

制度そのものには価値を感じるが、時間や冷却方法には改善の余地がある。

「選手から否定的な声があるから制度は無意味」「82%が効果を認めたから問題はない」のどちらも極端です。

クーリングタイムにはどのような効果が期待できるのか

甲子園のクーリングタイムは、単に「ベンチ裏で8分間休む制度」ではありません。

現在は身体の外側と内側から熱を逃がす対策、補水、着替え、体調確認などを組み合わせています。

暑熱環境から一時的に離れて熱負荷を下げられる

真夏の屋外で運動を続けると、筋活動によって体内で熱が作られるうえ、日射や高い気温の影響も受けます。

体から外へ逃がせる熱より、作られたり外部から受けたりする熱が多くなれば、体内に熱が蓄積していきます。

日本スポーツ協会は、身体冷却を外部冷却と内部冷却に分け、運動前だけでなく運動中や運動の合間に冷却する方法も紹介しています。

5回終了後に一度冷房の効いたスペースへ移る甲子園のクーリングタイムは、この「運動の合間に熱負荷を下げる」という考え方に沿ったものです。

アイススラリーで身体の内側から冷却する

現在の甲子園では、アイススラリーが用意されています。

アイススラリーは細かな氷を含むシャーベット状の飲料で、日本高野連はスポーツ飲料や経口補水液とともにベンチ裏へ常備し、理学療法士が試合前や試合中にも摂取を促しています。

暑熱環境での運動中に休憩時間を設け、アイススラリーを摂取した研究では、体温上昇を抑える方向の結果が報告されています。

研究対象の運動と高校野球は、年齢、運動強度、休憩時間、気温、湿度などが異なります。

そのため「アイススラリーを飲めば甲子園で熱中症を防げる」と単純化することはできませんが、暑熱環境で身体の内側から冷却する方法の一つとして合理性があります。

手のひらや頸部の冷却も行われている

クーリングタイムでは手のひらや頸部などを冷やす方法も採用されています。

日本高野連は、冷えたペットボトルを手で握ったり転がしたりする「手のひら冷却」を推奨しており、2026年大会でも継続しています。

現在のクーリングタイムで行われる主な対策
  • 冷房の効いたクーリングスペースへ移動する
  • サーモグラフィーなどを使って状態を確認する
  • 手のひらや頸部などを冷却する
  • アイススラリー、スポーツ飲料、経口補水液などを摂取する
  • 汗で濡れた衣類を必要に応じて着替える

なお、日本高野連の熱中症予防ページでは、サーモグラフィーによる確認を「体表温測定」としています。

サーモグラフィーで直接「深部体温」を測定しているわけではありません。体表温の確認と、アイススラリーなどによって体内の熱負荷を下げる対策は分けて理解する必要があります。

クーリングタイム後に足がつるのはなぜ?

「甲子園のクーリングタイムは逆効果なのか」という疑問で、最も気になるのが足のけいれんとの関係でしょう。

2023年にクーリングタイム直後の6回から足をつる選手が目立ったこと自体は事実です。しかし、運動中の筋けいれんは原因が一つに決まっている現象ではありません。

足がつる原因は「冷え」だけでは説明できない

運動中に起こる筋けいれんは「運動関連筋けいれん」と呼ばれ、長年さまざまな原因が議論されてきました。

脱水や電解質の不足だけで説明する考え方もあれば、筋疲労や神経筋制御の変化を重視する考え方もあります。

近年のレビューでも、運動関連筋けいれんは一つの原因だけで全員に起こるものではなく、選手それぞれの内的・外的要因を考慮する必要があると整理されています。

6回に足をつった場合でも、次のような複数の要素を考える必要があります。

  • 前半5イニングまでに蓄積した筋疲労
  • 発汗量や水分・電解質の状態
  • 気温、湿度、日射などによる暑熱負荷
  • その日の睡眠や食事などのコンディション
  • 過去に筋けいれんを起こしたことがあるか
  • 休憩中の過ごし方と試合再開への準備

したがって、「クーリングタイム後に足をつった」という時間的な前後関係だけで、「身体を冷却したことが原因だった」と結論づけることはできません。

冷却と再ウォームアップは両立させる必要がある

一方、「クーリングタイムが直接の原因とは証明されていないなら、休憩中は何をしても問題ない」ともいえません。

チームスポーツのウォームアップに関するシステマティックレビューでは、長い休止によってウォームアップで得られた効果が失われる可能性があり、競技再開前の再ウォームアップが爆発的な運動能力を保つうえで役立つと報告されています。

この研究は甲子園の高校野球選手を対象にしたものではないため、「再ウォームアップをすれば足がつらなくなる」とまでは言えません。

  • 熱中症予防のためには熱負荷を下げる
  • 6回からの競技に必要な筋活動も保つ

この2つを両立させることが、クーリングタイムの重要なポイントです。

高野連も再ウォームアップをルールへ組み込んだ

大会側も実際に運用を変えています。

2023年にはクーリングタイム中の関節運動やストレッチ、グラウンドへ戻る前の軽いジャンプなどを呼びかける対応が追加されました。

さらに2024年大会では、10分間のクーリングタイムについて終了3分前からウォーミングアップを始められると明記されました。

6回表から新たに登板する投手については、終了5分前からウォーミングアップを開始できる運用でした。

運用変更の意味

クーリングタイムを「最後まで完全に休ませる時間」にするのではなく、前半で身体を冷やし、後半は必要に応じて競技へ戻る準備をする時間へ調整されたと考えられます。

クーリングタイムが「いらない」と言われる理由

クーリングタイムへの不要論には、単なる根拠のない批判だけではなく、競技者だからこそ感じる不都合もあります。

一方、選手自身が「大丈夫」と感じていても、暑熱環境でのリスクがなくなるわけではありません。

  • 体が冷えて動きにくくなる
  • 投手や打線のリズムが途切れる
  • 普段からもっと暑い環境で練習している
  • 攻撃中にはベンチで休める

「体が冷えるからいらない」という選手の感覚

クーリングタイムを必要ないと感じる選手がいる最大の理由の一つが、競技再開時の身体感覚です。

実際の甲子園出場選手からも、クーリングタイム後に体が冷えて動きにくくなるという趣旨の声が報じられています。

特に投手は、肩や肘だけでなく下半身や体幹まで使って投球します。5回まで良いリズムで投げていた投手が途中の長い休止を好ましく感じないケースは考えられます。

野手についても、6回表から守備に入れば、クーリングタイム直後にダッシュ、急停止、方向転換などが必要になる可能性があります。

「普段の練習のほうが暑いから大丈夫」とは限らない

不要論では、「普段からもっと厳しい暑さの中で練習しているから、甲子園だけクーリングタイムを設ける必要はない」という考え方もあります。

暑い環境へ徐々に慣れる暑熱順化は熱中症対策として重要ですが、「暑さに慣れている」と「どれだけ暑くても安全」は同じではありません。

  • WBGT25℃以上では積極的に休息する
  • WBGT28℃以上では激しい運動を避ける
  • WBGT31℃以上では特別な場合を除き運動を中止する

日本スポーツ協会の熱中症予防運動指針では、気象条件に応じて運動そのものを制限する考え方が示されています。

「ベンチで休めるから不要」だけでも判断できない

野球では攻撃中にベンチにいる時間がありますが、通常の攻撃イニングは時間が一定ではありません。

三者凡退なら短時間で守備へ戻ることもありますし、打順が回れば走塁や打撃を行います。

ベンチにいることと、冷房の効いた場所で身体冷却、着替え、補水、体調確認まで計画的に行うことは同じではありません。

クーリングタイムを「なし」にすれば問題は解決する?

クーリングタイムへのデメリットが気になると、「それなら制度をなくしたほうがよい」という結論になりがちです。

しかし、クーリングタイムをなくせば休憩後の冷えは避けやすくなる一方、身体を冷やし、水分や塩分を補給し、状態を確認するまとまった機会も失われます。

クーリングタイムを減らしたり廃止したりするなら、別の暑さ対策が必要です。

  • 暑い時間帯そのものを避ける
  • 試合時間を短くする
  • 別の休息機会を設ける
  • 給水・身体冷却の機会を確保する

現在の甲子園は「廃止」ではなく改善を選んでいる

実際の甲子園では、クーリングタイムをなくすのではなく、運用を調整する方向へ進んでいます。

2023年に軽運動を追加し、2024年には終了前からウォームアップできる仕組みを設け、2025年からは従来の10分間を8分間へ短縮しました。

日本高野連は2026年の説明でも、10分から8分へ短縮した理由について、短縮しても効果を見込めるためとしています。

現在の方向性

必要な冷却時間は残しながら、長すぎる休止による競技への影響を小さくする方向で調整されています。

なお、2024年の代表校アンケートで「10分は長すぎる」という意見が出たことと、その後8分へ変更されたことは確認できますが、アンケートだけが短縮の直接的な理由だったとまでは断定できません。

2026年の甲子園ではクーリングタイムを8分間実施

クーリングタイムについて検索すると、「10分間」と説明する記事と「8分間」と説明する記事が混在しています。

これは制度が途中で変更されたためです。導入当初と現在では運用が同じではありません。

STEP

第105回大会
5回終了後に10分間で初導入。大会途中から軽運動の呼びかけを追加。

STEP

第106回大会
10分間を継続。終了3分前からウォームアップ可能に。

STEP

第107回大会
クーリングタイムを10分から8分へ短縮。

STEP

第108回大会
8分間のクーリングタイムを継続。

そのため、現在の甲子園について「クーリングタイムは10分ある」と説明すると古い情報になる点には注意が必要です。

8分間に冷却だけでなく複数の対策を行う

2026年のクーリングタイムでは、選手全員がベンチ裏の冷房が効いたクーリングスペースへ移動します。

理学療法士の指導のもとで、サーモグラフィーによる確認、着替え、手のひらや頸部などの冷却、アイススラリー、スポーツ飲料、経口補水液の摂取などを行っています。

第106回大会からは、ユニホームまで着替えられるよう背番号を2枚配布する仕組みも導入されています。

つまり8分への短縮は、「2分間だけ暑さ対策を減らした」と単純に見るべきではありません。

クーリングタイムだけで熱中症を防げるわけではない

クーリングタイムに効果があるとしても、「8分間休めば真夏でも安全」という意味ではありません。

現在の甲子園でも、クーリングタイムは数ある暑さ対策の一つとして位置づけられています。

2026年は暑い時間帯そのものを避ける対策も拡大

2026年の第108回大会では、暑さ対策と選手の負担軽減を目的として、2部制と同様の時間帯で試合を行う日を計10日へ拡大しています。

日本高野連は、近年選手の熱中症疑いが多かった時間帯の試合を避けることを理由として説明しています。

身体が熱くなってから8分間冷やすだけでなく、最初から強い暑熱環境にさらされる時間を減らす方向へ暑さ対策が広がっています。

WBGTの測定や医療スタッフの配置も行われている

2026年大会では、本塁付近、外野芝上、アルプス席など複数の場所でWBGTや気温を定期的に測定し、必要に応じて審判やチーム関係者へ注意喚起しています。

球場内には救護室が設けられ、内科医や看護師が配置されるほか、選手のけがや体調不良へ対応する医療スタッフも常駐しています。

補食や試合前ノックの負担軽減も行われている

日本高野連は、過去の大会で第1・第2試合に熱中症症状が目立ったことを受け、球場到着後に栄養補給できる補食も導入しています。

2026年も、おにぎり、パン、ゼリータイプの栄養食品、100%果汁などを提供しています。

さらに第107回大会からは、試合前の守備練習であるノックを実施するかどうかをチームが選べるようになり、実施する場合の時間も5分となりました。

甲子園で組み合わせている主な暑さ対策
  • 試合時間帯そのものを調整する
  • WBGTや選手の体調を確認する
  • 身体の外側と内側から冷却する
  • 水分・塩分だけでなく試合前の栄養も補う
  • 試合前から不要な身体的負担を減らす

クーリングタイムをより効果的にするために重要なこと

甲子園での数年間の運用を見ると、「クーリングタイムを設ければ完成」ではなく、実際に選手がどう感じ、どのような症状が出たかを見ながら制度が修正されていることが分かります。

今後も必要なのは、冷却の効果を得ながら、競技再開への影響をできるだけ抑えることです。

STEP

全員を同じ方法で冷やしすぎない

選手によって体格、発汗量、疲労、暑さへの慣れ方、ポジションは異なります。同じ5回終了時でも必要な対応が同じとは限りません。

STEP

後半は競技再開へ向けて体を動かす

前半では熱負荷を下げ、水分や塩分を補給する。状態に問題がなければ後半では軽い関節運動やウォームアップを取り入れ、6回のプレーへ備えるという使い分けが考えられます。

STEP

投手と野手でも準備を変える

投手なら肩や下半身を投球できる状態へ近づけ、守備側の野手ならダッシュや方向転換へ備えるなど、役割によって必要な準備は異なります。

ただし、体調不良や熱中症が疑われる選手については別です。

試合再開を優先して無理に体を動かすのではなく、安全を最優先に冷却、休息、医療スタッフによる評価が必要です。

甲子園のクーリングタイムに関するよくある疑問

検索されることが多い疑問について、現時点で確認できる事実と研究上分かっていることを分けながら答えます。

甲子園のクーリングタイムは本当に逆効果ですか?

熱中症対策としてクーリングタイム自体が逆効果だと断定できる根拠はありません。

身体冷却や休息、水分補給には暑熱環境で体に蓄積する熱を抑えるための合理性があります。また、2024年大会後の代表49校へのアンケートでは、報道によると82%がクーリングタイムに効果があったと回答しています。

一方、体が冷えて動きにくくなるという選手の声もあるため、制度自体が逆効果というより、冷却時間や方法、再ウォームアップを含む運用の仕方が重要と考えるのが妥当です。

クーリングタイムが原因で足がつるのですか?

直接の原因だとは確認されていません。

2023年にクーリングタイム直後から足をつる選手が目立ったことは事実ですが、運動関連筋けいれんには筋疲労やコンディションなど複数の要因が関係すると考えられています。

クーリングタイムには熱中症を防ぐ効果がありますか?

クーリングタイムだけで熱中症を完全に防ぐことはできません。

ただし、暑熱環境から一時的に離れ、身体冷却、水分・塩分補給、状態確認を行うことには意味があります。現在の甲子園でも、試合時間帯の変更やWBGT測定、健康管理、補食などを組み合わせています。

クーリングタイムはいらないのでは?

「体が冷える」「試合のリズムが切れる」と感じる選手がいるため、不要論が出る理由は理解できます。

一方、代表校アンケートでは効果を認める回答が82%を占めています。そのため、「いらないから廃止」とするより、時間、冷却方法、選手ごとの対応、再ウォームアップを改善するほうが現実的です。

クーリングタイムなしのほうが足はつりにくいですか?

現時点では、そのように断定できません。

筋けいれんには複数の要因が関係します。クーリングタイムをなくせば休止による身体感覚の変化は小さくなる可能性がありますが、熱負荷を下げ、水分や塩分を補給するまとまった機会も減ります。

なぜ現在は10分ではなく8分なのですか?

日本高野連は、2023年の導入時には10分間だったクーリングタイムについて、「短縮しても効果は見込める」として2025年の第107回大会から8分間へ変更しています。

2026年の第108回大会でも8分間が継続されています。

甲子園のクーリングタイムは逆効果ではなく、運用の質が問われている

甲子園のクーリングタイムが「逆効果」と言われるのには、はっきりとした理由があります。

制度が初めて導入された2023年には、クーリングタイム直後の6回から足をつる選手が目立ちました。

さらに、実際の選手からも「体が冷える」「動きにくい」「必要ない」といった趣旨の意見が出ています。

この現場の声を無視すべきではありません。

一方で、「クーリングタイムがあるから足がつる」「熱中症対策として逆効果」とまで断定できる根拠もありません。

運動中の筋けいれんは、筋疲労や選手個人の状態など複数の要因が関係すると考えられており、身体冷却にも暑熱環境での熱負荷を軽減する方法として合理性があります。

最終的な結論

効果は感じられている。しかし、やり方は改善する必要がある。

2024年大会後の代表49校へのアンケートでは、82%がクーリングタイムに効果があったと回答する一方、冷やしすぎへの不安や10分は長いという改善意見も出ました。

実際、軽運動の追加、ウォームアップ時間の設定を経て、2025年には10分から8分へ短縮され、2026年も8分間の運用が続いています。

暑熱環境で上がった熱負荷を安全に下げながら、冷やしすぎや長い休止による影響を抑え、選手が後半のプレーへスムーズに戻れる8分間をどう作るか。

ここがクーリングタイムの本質的な課題です。

現在の制度は完成形ではなく、実際の選手の反応や医学的な知見を取り入れながら改善されてきました。

「クーリングタイムは逆効果だからなしにすべき」と決めつけるより、必要な熱中症対策を維持しながら、個人差に合わせた冷却と再ウォームアップを両立させていくことが、夏の高校野球にとって現実的な方向といえるでしょう。

なお、甲子園のクーリングタイムが何分なのか、何回行うのか、いつから導入されたのか、なぜ現在は8分なのかなど制度の基本情報については、親記事「クーリングタイムとは?甲子園・高校野球では何分?回数・いつから導入されたか」で詳しく確認できます。

出典・参考資料

本記事の制度・暑さ対策・運動時の身体冷却などに関する主な出典は以下のとおりです。

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